塾テナントの「トイレ数」は足りているか|生徒数・お迎えラッシュ時間帯から考える目安
物件の内見では教室の広さや賃料、駅からの距離には目が行きやすいが、「トイレの数」は後回しにされがちなポイントだ。ところが開業後にもっとも顕在化しやすい不満の一つが、下校・お迎えの時間帯にトイレが混雑し、生徒の行列ができてしまう問題だ。物販店や事務所として使われていた前テナントの設備をそのまま引き継ぐと、生徒数のピークに対してトイレの数が足りないことに気づかないまま契約してしまうケースがある。
なぜトイレの数が見落とされやすいのか
建築基準法上、便所の設置そのものは建築確認において必要な設備だが、店舗・貸室の用途において「便器を何個以上設置すること」という一律の法定基準が学習塾に対して明確に定められているわけではない。労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則には、労働者数に応じた便所の設置基準があるが、これは従業員(講師・スタッフ)を対象にした基準であり、生徒という「利用者」の人数に対する法的な最低基準ではない。つまり、法令上は物件のトイレ数が「足りているかどうか」を直接判定する明確な基準がなく、内見の際に見た目の設備数だけで判断してしまいやすい。前テナントが小規模なオフィスや美容室だった物件では、トイレが1つしかないことも珍しくなく、そのまま塾として使うと生徒数に対して明らかに不足する場合がある。
起こりやすい失敗パターン
ある塾長は、生徒定員60名規模の教室を、前テナントが小規模な士業事務所だった物件で開業した。事務所仕様のためトイレは1つのみで、当初は「授業中に順番に行けば足りるだろう」と考えていたが、実際には集団授業の開始前・終業後の10〜15分間に利用が集中し、特に低学年クラスと自習室利用の生徒が重なる時間帯には行列ができてしまった。保護者からの送迎待ちの時間にトイレに行きたい生徒が並ぶ様子を見て、内装工事の追加でトイレを増設せざるを得なくなり、当初の予算より内装費用がかさんだという。逆に、複数教室・複数学年を同時に運営する規模の大きい塾では、男女別トイレを最初から確保できる物件を優先して選定し、開業後のクレームがほとんど出なかったという声もある。
判断基準・チェックポイント
- ピーク時間帯を具体的に想定する:集団授業の入れ替わり時間、個別指導のコマ切り替え時間、自習室利用のピーク時間帯に、同時にどれくらいの生徒が滞在するかを想定する
- 男女別トイレの有無を確認する:小規模物件では男女共用の1室のみというケースも多く、生徒数が多い場合は男女別が望ましい
- 講師・スタッフ用トイレと生徒用を分けられるか検討する:小規模物件では分けにくいが、可能であれば動線上のトラブルを減らせる
- 増設の可否と概算費用を業者に確認する:給排水管の位置によっては増設が難しい、または高額になる物件もあるため、内見時に増設可否を相談しておく
- 前テナントの業種を確認する:物販店・飲食店だった物件は来客数に対応したトイレ数を備えていることが多く、事務所・美容室だった物件は少ない傾向がある
- バリアフリー対応の要否も合わせて確認する:車椅子の生徒や高齢の送迎者を想定する場合は、多目的トイレの有無も確認しておきたい
生徒定員別のトイレ数の考え方(目安)
| 教室規模(同時在室の目安) | トイレ数の考え方 | 備考 |
|---|---|---|
| 〜20名程度 | 1室(できれば独立個室)でも運用しやすいとされる | 個別指導・小規模教室に多い規模感 |
| 20〜50名程度 | 男女別、または2室以上が望ましいとされる | 集団授業と自習室を併設する塾に多い規模感 |
| 50名以上 | 男女別複数室+多目的トイレの検討が望ましいとされる | フロア全体・複数教室を運営する規模 |
編集部からのアドバイス
川越市・坂戸市・東松山市、あるいはふじみ野市・富士見市といった東武東上線沿線のロードサイド・郊外型物件を検討する場合、前テナントがコンビニや飲食店だった居抜き物件はトイレ数に余裕があることが多い一方、事務所・倉庫だった物件は生徒数に対して不足しがちな傾向がある。内見時には教室の広さだけでなく、必ずトイレの個室数と男女別の有無を確認し、増設が必要になりそうであれば内装工事の見積もりに含めて予算を組んでおきたい。テナントの給排水管の位置は工事後に変更しにくいため、増設予定がある場合は契約前に必ず現地で配管の取り回しを確認することをおすすめする。
本記事で示したトイレ数の目安はあくまで一般的な運営経験に基づく参考値であり、法令上の一律の基準ではない。物件ごとの給排水設備・建築構造・自治体の指導内容によって増設の可否や必要な工事内容は異なるため、実際の判断にあたっては内装業者・宅地建物取引士など専門家に個別に確認してほしい。
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