個人塾の合格実績・成果アピールと景品表示法の注意点|広告表示で失敗しないための実務ガイド

なぜ「実績の見せ方」を開業前に押さえておくべきか

個人塾が生徒募集を成功させるうえで、合格実績や成績アップの実績は最も強力な訴求材料の一つです。しかし、開業間もない塾の場合、まだ手元に十分な実績データがないにもかかわらず、集客を焦るあまり誇張した表現やあいまいな根拠の数字をチラシやホームページに載せてしまうケースが見られます。過大な表示や事実と異なる表示は、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の「優良誤認表示」に該当するおそれがあり、行政指導や措置命令の対象になり得ます。個人塾であっても事業者として広告を出す以上は対象外にはなりません。開業前の段階で「どこまでなら言えるのか」「何を根拠として残しておくべきか」を理解しておくことは、安心して集客活動を行うための土台になります。

景品表示法の基本と塾業界で特に注意したい表示

景品表示法は、商品・サービスの内容について実際よりも著しく優良であると消費者に誤認させる表示(優良誤認表示)や、価格について著しく有利であると誤認させる表示(有利誤認表示)を禁止しています。学習塾の広告で特に注意が必要なのは、次のような表示です。

  • 実際には数名の合格実績しかないのに、あたかも多数の合格者を輩出しているかのように見せる表示
  • 他の塾や自習で身についた学力を、自塾の指導成果であるかのように示す表示
  • 特定の生徒1名の突出した成績向上を、あたかも塾全体の平均的な成果であるかのように示す表示
  • 開業前で実績がまだ存在しないにもかかわらず、実績があるかのように誤認させる表現
  • 「絶対に成績が上がる」「必ず志望校に合格できる」など、効果を保証するかのような断定的表現

これらは意図的な虚偽でなくても、表現の仕方次第で「誤認させるおそれがある表示」と判断される可能性があります。個人塾は広告の作成を外部業者に丸投げすることも多いため、最終的な表現のチェックは塾長自身が行う体制にしておくことが望ましいでしょう。

表示OK・NGの考え方(例)

以下は一般的な考え方の整理であり、個別の表示が適法かどうかの最終判断は必ず専門家(弁護士・行政書士等)や消費者庁の公表資料で確認してください。

表示内容注意すべき考え方
「合格実績◯名」と表示する集計期間・対象学年・在籍期間などの条件を明記し、実数として説明できる根拠資料を保管しておく
「偏差値◯◯アップ」と表示する個別の生徒の事例であれば「個人の感想・一例です」等、全体の平均でないことが分かる補足を添える
「成績が必ず上がります」と表示する効果を保証する断定的表現は避け、「指導実績」「取り組み内容」ベースの表現にとどめる
他塾からの転塾生の実績を含める自塾での在籍期間・指導内容による成果であることが分かるよう説明を付す
開業直後で実績データがない実績を誇張せず「開校したばかりの新しい塾です」という正直な打ち出し方で信頼を積み上げる

実績を正しく見せるための実務ポイント

  • 集計の根拠を必ず記録として残す:合格者数・成績向上の実例は、いつ・誰が・どのような条件で集計したかを社内資料として保管しておく
  • 集計対象の条件を広告にも明記する:「◯年◯月〜◯月に在籍し、◯回以上受講した生徒を対象」など、母数の条件を可能な範囲で示す
  • 保護者・生徒本人の同意を得る:実名や写真、個別の成績データを広告に使う場合は、事前に書面等で使用許諾を得ておく
  • 開業直後は「実績」ではなく「指導方針」で訴求する:データが少ない時期は、講師の指導経験やカリキュラムの特徴、体験授業の内容で信頼を得る打ち出し方に切り替える
  • 広告物を出す前に第三者にチェックしてもらう:塾長本人だけでなく、家族やスタッフなど客観的な視点でも表現を確認する

失敗しやすいポイント・うまくいった対応例

  • うまくいかなかった例:開業初年度、実績がほとんどない状態で「合格者多数」とチラシに記載してしまい、保護者から根拠を問われて説明に窮した
  • うまくいかなかった例:1名の生徒の突出した偏差値上昇をそのまま塾の看板実績として大きく打ち出し、体験授業に来た他の保護者から「本当に自分の子にも当てはまるのか」と不信感を持たれた
  • うまくいった例:開業初年度は実績データの代わりに「講師全員の指導歴」「1回あたりの指導時間」など具体的な指導内容を数値で示し、実績に頼らない訴求で信頼を得た
  • うまくいった例:合格実績を表示する際に集計期間と対象人数の条件を必ず併記する社内ルールを作り、翌年以降も一貫した基準で運用できた

編集部からのアドバイス

実績表示のルールは、集客を制限するためのものではなく、長く地域に信頼される塾であり続けるための土台です。開業直後で実績が少ない時期こそ、誇張表現に頼らず、指導方針や体験授業の中身で正直に勝負する姿勢が、結果的に保護者からの信頼につながります。広告表現に少しでも不安がある場合は、公開前に消費者庁の公表資料を確認するか、弁護士・行政書士など専門家にチェックを依頼することをおすすめします。

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