感染症・災害で休校を余儀なくされたら賃料はどうなる?塾テナント契約の「不可抗力条項」を読み解く

学習塾を長く運営していると、火災や地震のような物理的な被害を受けなくても、感染症の流行や自治体からの休校要請、大規模な自然災害の警戒情報などによって「教室を開けられない」状況に直面することがある。このとき見落とされがちなのが、賃貸借契約書に「不可抗力条項(Force Majeure)」がどう定められているか、そして休校期間中も賃料の支払い義務がそのまま続くのかという論点だ。物件の立地や内装ばかりに気を取られ、こうした非常時の取り決めまで確認している塾長は多くない。

なぜ「不可抗力条項」が塾テナントにとって重要なのか

不可抗力条項とは、天災・感染症の流行・戦争・法令に基づく行政命令など、当事者の責任によらない事由で契約の履行が困難になった場合の取り扱いを定める条項である。一般的な賃貸借契約では、貸主が建物を使用させる義務を負い、借主(塾側)はその対価として賃料を支払う義務を負う。しかし、建物自体は無傷でも、行政の休校要請や緊急事態宣言のような外部要因で「営業ができない」状態になった場合、賃料支払い義務がどう扱われるかは契約書の記載次第で大きく変わる。

民法上、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用収益できなくなった場合、その割合に応じて賃料が当然に減額される旨の規定があるが、これは主に建物自体の物理的な使用不能を想定したものであり、「建物は無傷だが行政要請で営業を止めた」というケースに当然に適用されるかは解釈が分かれやすい。契約書に不可抗力条項や休業時の賃料の取り扱いが明記されていない場合、貸主・借主どちらの言い分にも一定の根拠が生まれ、トラブルの火種になりやすい。

実際にあった相談・対応の分かれ方

ある個人塾では、感染症の流行に伴う休校要請期間中も賃貸借契約書に不可抗力条項がなく、貸主との間で賃料の取り扱いについて話し合いが必要になった。最終的には貸主の厚意で一定期間の賃料の一部が減免されたが、これはあくまで個別の交渉によるものであり、契約上の権利として認められたわけではなかったという。一方、別の塾では、契約時点で「行政の休業要請等により営業が不能となった場合、賃料の一部を協議のうえ減額できる」という条項があらかじめ盛り込まれており、非常時にも交渉の出発点が明確だったため、比較的スムーズに話がまとまったというケースもある。

また、台風や大雪などの一時的な休校であれば数日〜数週間の話で済むことが多いが、地域全体に影響する大規模災害や長期の休校要請では、賃料負担が続く一方で売上が大きく落ち込む状況が数ヶ月に及ぶこともある。契約書に何の定めもないまま非常時を迎えると、資金繰りの見通しが立てづらくなる点は、開業前に想像しておきたいリスクの一つだ。

契約書で確認しておきたいポイント

  • 不可抗力条項そのものの有無(天災・感染症・行政命令等を対象に含んでいるか)
  • 不可抗力により休業した場合の賃料の取り扱い(当然減額・協議事項・据え置きのいずれか)
  • 賃料減額を求める場合の手続き(貸主への通知期限、必要書類、協議の進め方)
  • 共益費・管理費についても賃料と同様の取り扱いとなるか、別扱いとなるか
  • 休業が長期化した場合の中途解約条項との関係(不可抗力を理由とする解約の可否)
  • 火災保険・休業損害保険等でカバーされる範囲と、契約上の賃料減免でカバーされる範囲の違い

条項がない場合・曖昧な場合の考え方(目安)

既存の契約書に不可抗力条項が入っていない、あるいは記載が曖昧な場合でも、すぐに契約を結び直せるとは限らない。まずは貸主・管理会社に対して、非常時が発生した際の賃料の考え方について事前に確認し、必要であれば覚書や特約という形で追記できないか相談してみるのも一つの方法だ。また、賃料の減額を法的な権利として主張できるかどうかは、休業に至った経緯(行政命令の有無、建物自体の使用可否など)や契約書の他の条項との整合性によって個別の判断が必要になるため、争いになりそうな場合は早めに弁護士へ相談することが望ましい。

確認事項目安・考え方
不可抗力条項の有無契約書・重要事項説明書の特約欄を確認。無ければ追記できないか貸主に相談
賃料減額の性質「当然減額」か「協議による減額」かで交渉の出発点が大きく変わる
休業損害保険との関係保険は自社の収入減を補償するもの、契約条項は賃料そのものの減免に関わるもの、と役割が異なる
長期休業時の解約不可抗力による休業が一定期間続いた場合の中途解約条項の有無も確認

編集部からのアドバイス

不可抗力条項は、開業直後にはまず意識されない項目だが、いざというときの資金繰りに直結する。東武東上線沿線をはじめ複数エリアで物件を比較検討している段階から、賃料や立地の条件だけでなく「非常時に賃料がどう扱われるか」まで契約書に目を通しておくと、実際に休校を余儀なくされたときの交渉が格段にスムーズになる。契約書に条項がない場合は無理に自己判断せず、貸主・管理会社との事前確認や、必要に応じた弁護士への相談を通じて、自塾の状況に合った備えを整えておきたい。

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