個人塾講師の授業準備・研修時間は賃金の対象?コマ給で最低賃金割れを防ぐ労働時間の考え方

「授業は90分、でも授業の前後に準備と片付けがある」。個人塾では、この授業以外の時間に賃金を払っているかが、講師との信頼やトラブルの分かれ目になります。コマ単価だけを決めて運用していると、気づかないうちに最低賃金を下回る、あるいは未払い賃金を請求されるリスクがあります。本記事では、授業準備・研修・会議などの時間の扱いを整理します。金額や時間は例示で、すべて目安です。

なぜ「コマ給」だけでは危ないのか

労働基準法上の労働時間は、使用者の指揮命令下にある時間で判断されます。実際に教壇に立っている時間だけではなく、塾が義務づけている、または事実上やらざるを得ない準備や後始末も含まれると考えられます。川越・志木・朝霞など東上線沿線のように学生講師が多い教室でも、アルバイトだから対象外ということはありません。

授業以外の時間、どこまでが労働時間か

業務労働時間として扱う目安注意点
授業前の教材準備・教室設営塾の指示・業務上必要なら対象「早く来て準備して」が慣行なら対象になりやすい
授業後の片付け・日報記入対象終業時刻を授業終了時刻で打ち切らない
テストの採点・添削対象自宅持ち帰りでも指示があれば対象になりうる
保護者への連絡・面談対象LINE等の私的端末での対応も記録する
研修・全体会議参加が義務なら対象「任意参加」としても不参加で不利益なら実質義務
授業と授業の空き時間手待ち時間は対象、完全に自由なら休憩自習室監督を兼ねるなら対象

※個別の事案は実態で判断されます。最終的な判断は社会保険労務士や労働基準監督署など専門家・公的機関にご確認ください。

最低賃金割れを防ぐ計算の例

コマ給で支払う場合は、準備・片付けを含めた総拘束時間で割った時給換算が、地域別最低賃金を上回っているか確認します。例として、授業90分に準備・片付け30分を加えた120分を1コマとします。

1コマの支払額(例)授業時間のみで換算準備込み120分で換算
2,400円1,600円/時1,200円/時
1,800円1,200円/時900円/時

上の例では、1,800円のケースは授業時間だけで見ると高く見えても、準備込みで換算すると低くなります。地域別最低賃金は毎年10月前後に改定されるため、最新額は厚生労働省・埼玉労働局など公式発表でご確認ください。

ルール設計の4ステップ

  • ①業務の棚卸し:授業・準備・採点・面談・研修・会議を書き出し、塾が求めるものを明確にする
  • ②支払い方法を決める:「授業コマ+準備手当」「準備時間を含む時給制」など、雇用契約書・労働条件通知書に明記する
  • ③勤怠を記録する:出退勤の打刻や自己申告を残し、残業・深夜(22時以降)の割増賃金の対象になるか確認する
  • ④休憩を確保する:1日の労働時間が6時間超なら45分以上、8時間超なら60分以上の休憩が必要

失敗例・成功例(匿名事例)

  • 失敗例:コマ給のみで運用し、採点や面談は「サービス」扱いに。退職時に未払い分を請求され、過去にさかのぼって精算することになった。
  • 失敗例:研修を「任意参加」としたが、参加しない講師のシフトを減らしたため、実質的な義務と指摘された。
  • 成功例:1コマに準備・片付け時間をあらかじめ組み込み、時給換算を明示。講師の納得感が高まり、定着率も改善した。

編集部からのアドバイス

  • 「準備は自主的なもの」と思い込まず、塾の業務として必要な作業は時間に含める前提で単価を設計しましょう。
  • 授業準備を減らす工夫(共通教材の整備、テンプレート化)は、人件費の抑制と授業品質の両立に役立ちます。
  • 業務委託契約でも、実態として指揮命令を受けていれば労働者と判断される可能性があります。契約形態は専門家と確認してください。
  • 本記事は2026年時点の一般的な情報です。労働法令や最低賃金は改定されるため、最終確認は社会保険労務士・労働基準監督署へ。

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