塾テナント入居時の「現況確認」と写真記録のすすめ|退去時の原状回復トラブルを防ぐ引き渡し前チェックポイント

退去時の原状回復で揉める塾は少なくありません。その原因の多くは、工事の内容そのものではなく、「入居した時点で、どこがどんな状態だったか」を誰も記録していなかったことにあります。本記事では、契約前後に行っておきたい「入居時の状態確認」と写真記録の進め方を整理します。

なぜ入居時の記録が退去時の費用を左右するのか

事業用の賃貸借では、居住用のように国のガイドラインに沿って負担を整理する前提が当てはまりにくく、原状回復の範囲は契約書の特約と当事者間の合意で決まるのが基本です。そのため退去時に「この傷は入居前からあった」と主張できるかどうかが、負担額の差になって表れます。

特に塾は、個別ブースの設置や防音壁の施工、書架の固定などで壁・床・天井に手を入れることが多く、「どこまでが元からの傷や汚れで、どこからが自分たちの工事によるものか」の線引きが難しくなりがちです。

起こりがちなトラブル(匿名の事例)

ある塾長は、退去時に「床のへこみと壁の穴は借主の責任」と指摘されましたが、入居時の写真が一枚もなく、反論できないまま補修費を負担することになったそうです。

別の塾長は、居抜きで入居した際に「前の入居者の設備はそのまま使ってよい」と口頭で聞いていたものの、設備の一覧がなく、退去時にどれが貸主の所有でどれが前テナントの残置物かで話がかみ合わなくなったといいます。

入居時に確認・記録しておきたい7つのポイント

  • 床:へこみ・傷・シミ・タイルカーペットの浮きや色ムラ
  • 壁・天井:穴、ひび、変色、雨漏りの跡、天井材の欠け
  • 建具・窓:ドアの開閉、鍵、サッシ、ガラスのひび、ブラインドの有無
  • 空調・換気設備:エアコンの型式・製造年、動作確認、フィルターの状態
  • 水回り:トイレ・給湯室の水漏れ、排水の流れ、においの有無
  • 電気設備:分電盤、コンセントの位置と数、照明器具の点灯状況
  • 残置物・設備:貸主所有か前テナント所有か、撤去や処分は誰が行うか

記録の取り方:写真・動画・書面の三点セット

記録は「あとから第三者が見ても分かる」ことが大切です。次の手順を目安にしてください。

  • 引き渡し前、工事の着手前に撮影する(工事後では「元から」の証拠になりません)
  • 日付が残る形で撮る。撮影日が分かる設定にするか、メールで貸主・管理会社へ送って送信日時を残す
  • 全体写真と近接写真をセットにし、近接写真には定規やメジャーを添えて傷の大きさが分かるようにする
  • 動画で部屋を一周して撮り、壁・床・天井の通し記録も残す
  • 「現況確認書」や「引渡時チェックリスト」を貸主・管理会社と取り交わし、双方が署名または押印する
  • 傷や不具合の見つかった箇所は、「入居前からあるもの」として書面に追記してもらう

確認と記録のポイントを整理した表

タイミングやること見落としやすい点(目安)
内見時気になる傷・不具合をその場で撮影契約前は貸主側が追記に応じやすい
契約締結時設備一覧・残置物リストを契約書に添付口頭の説明は担当者交代で引き継がれにくい
引き渡し時・工事前全体と近接の写真・動画、現況確認書の取り交わし工事着手後では元の状態の証明が困難になる
工事完了時施工後の状態も撮影し、施工内容を記録退去時に「どこを施工したか」を示す根拠になる

写真や書面は、契約書や図面と一緒に、退去まで確実に保管できる場所(クラウドと紙の両方など)に整理しておくと安心です。

編集部からのアドバイス

原状回復は「退去時に考えるもの」と思われがちですが、実際には入居前の記録づくりが最も効果的な予防策です。東武東上線沿線の志木・朝霞・川越など、築年数の経った駅前ビルを検討するときほど、入居時点の傷や設備の経年劣化が多く、記録の有無が後々に響きやすくなります。内見の段階からスマートフォンで撮影する習慣をつけておくと、無理なく続けられます。

なお、本記事は2026年時点の一般的な考え方に基づく解説です。原状回復の範囲や負担の考え方は、個別の契約内容により異なります。具体的な契約条項については、貸主・管理会社、必要に応じて弁護士などの専門家にご確認ください。

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