生徒数減少やオンライン化で教室が余ったら?塾テナントの「減床」で確認すべき契約・原状回復のポイント

開業時には満室だった教室も、学年構成の変化やオンライン授業の導入によって、使わない教室・自習ブースが出てくることがあります。生徒数の増加に合わせて隣の区画を借り増しする「増床」とは逆に、契約している床面積の一部を大家に返して賃料負担を軽くする「減床」を検討する塾長も少なくありません。しかし減床は「使っていない部分を返すだけ」の単純な話ではなく、契約上どこまでを返還区画として切り出せるか、原状回復の範囲はどこまでか、消防法上の収容人員や設備要件が変わらないかなど、増床とは違う論点を含んでいます。東武東上線沿線の駅前ビルに入る塾でも、集団授業から個別指導中心へ切り替えたことで教室の一部が空いたまま、という声を聞くことがあります。

減床には主に3つのパターンがある

塾テナントの減床は、大きく分けて「同じフロア内の一部区画だけを解約し、残りの区画で契約を継続するパターン」「複数フロアを借りている場合に、1フロア分を丸ごと解約するパターン」「区画自体は変えず、床面積は維持したまま賃料の見直しだけを交渉するパターン」の3つに分かれます。最初の2つは、いずれも契約対象の床面積が実際に減るため、賃貸借契約の変更契約書を交わし、返還区画の範囲・引き渡し期日・原状回復の内容を書面で確定させる必要があります。3つ目は面積自体は変わらないため契約変更は不要に見えますが、実質的には賃料減額交渉であり、貸主の合意なしには進みません。どのパターンを取るかによって、原状回復義務の範囲や賃料の按分計算、消防法上の届出の要否が変わってくるため、減床を打診する段階でどの形にしたいかを整理しておくことが大切です。

失敗事例・成功事例

ある塾長は、オンライン授業への切り替えで使わなくなった3階部分を「もう不要なので解約したい」と管理会社に伝えたところ、契約上は1階から3階までが一体の賃貸借契約になっており、一部だけを解約する仕組みが用意されていないことが分かった。結局、全体を一度解約して1・2階分だけで再契約する形になり、敷金の再計算や賃料改定の交渉に想定以上の時間がかかったという。一方、別の塾長は、減床を検討し始めた段階で「返還区画だけを切り出す変更契約は可能か」を先に管理会社に確認し、可能であるとの回答を得たうえで、返還区画の原状回復範囲(壁紙・床材をどこまで戻すか)を交渉してから話を進めた。結果として、残す区画の授業を止めることなく、比較的スムーズに賃料負担を減らすことができたという。減床でも増床と同様、契約変更の可否と原状回復の範囲を先に書面で確定させることが、トラブルを避ける分かれ目になっています。

減床前に確認すべきチェックリスト

  • そもそも一部区画だけの解約が契約上可能か、貸主・管理会社に確認したか(一体契約の場合、全体解約→再契約になることがある)
  • 返還区画の原状回復の範囲(壁紙・床材・間仕切り・配線をどこまで戻す必要があるか)を書面で確認したか
  • 残す区画の賃料・共益費が、面積按分でどう改定されるか(坪単価が変わらないか、最低賃料保証などの条項がないか)を確認したか
  • 返還により延べ床面積・在館者数が減ることで、消防法上の防火対象物の区分や必要な消防用設備に変更が生じないか、所轄消防署に確認する必要があるかを把握したか
  • 返還区画と残す区画の間に防火区画としての壁が必要になる場合、新設工事の費用負担が貸主・借主どちらになるか確認したか
  • 敷金・保証金が面積按分で一部返還される場合、返還時期と返還方法(現金・相殺)を確認したか
  • 減床のタイミングが契約更新時期と重なる場合、更新料や更新後の契約条件にどう影響するか整理したか

減床にかかる費用・期間の目安

減床にかかる費用や期間は、返還する区画の面積や原状回復の内容、貸主との交渉次第で大きく変わります。以下はあくまで一般的な目安であり、実際の金額・期間は個別の物件・契約内容によって異なります。

項目目安
返還区画の原状回復費用坪あたり数万円〜、スケルトン返しを求められる場合はさらに高額になる目安
敷金・保証金の返還面積按分で一部返還されるケースが多いが、償却済み分は戻らない契約もある目安
防火区画の新設工事(必要な場合)壁の構造・面積によって数十万円〜変動
変更契約の締結〜返還完了までの期間1〜2か月程度、全体解約・再契約が必要な場合はさらに時間を要する目安

編集部からのアドバイス

減床は「賃料負担を軽くできる」というメリットばかりに目が向きがちですが、原状回復費用や敷金の一部償却によって、想定していたほど手元に資金が残らないケースもあります。また、一体契約になっている物件では一部解約という選択肢自体が存在せず、全体を解約していったん再契約する形にせざるを得ないこともあるため、契約書の構成を早い段階で確認しておくことが重要です。生徒数の増減やオンライン化への対応は今後も続く経営判断のひとつですが、床面積を減らす決断をする前に、原状回復の範囲と賃料改定の条件を必ず書面で確定させてから進めることをおすすめします。

減床に伴う契約変更の方式や、原状回復・消防法上の取り扱いは、物件の構造や契約内容、所在する自治体によって個別に判断が必要です。本記事は一般的な考え方の紹介であり、実際の減床にあたっては宅地建物取引士、建築士、所轄消防署など専門家・関係機関に必ずご確認ください。

本サイトについて

「全国「塾」テナント不動産 JUKU tenant.com」は、20年以上にわたり埼玉県西部で学習塾4ブランドを運営してきた EIMEI教育学習塾グループ が、塾現場で培った「塾向け物件選び」の知見を全国の塾開業希望者に共有するために運営しています。

取材依頼・物件情報の掲載・塾運営に関するご相談は、サイト内お問い合わせフォームよりお寄せください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です