塾テナント契約の「競業避止条項」とは|同じビル・商業施設に競合塾を入れさせない交渉ポイント
複数テナントが入る商業ビルやショッピングモール、駅前の複合ビルに出店する際、意外と見落とされがちなのが「競業避止条項(テナント排他条項)」の有無です。せっかく好立地に出店できても、半年後に同じビルの別フロアに競合の学習塾が入居してしまえば、集客や生徒の取り合いに直結します。今回は、塾テナント契約における競業避止条項の考え方と、交渉時に押さえておきたいポイントを整理します。
※本記事は2026年(令和8年)時点の一般的な考え方を整理したものです。契約条項の有効性や解釈は個別の契約内容・物件の状況によって異なるため、最終的な判断は必ず宅地建物取引士・弁護士など専門家にご確認ください。架空の物件情報や具体的な募集案件を示すものではありません。
競業避止条項とは何か
競業避止条項とは、貸主(オーナーやビル管理会社)が、そのビルや商業施設内の他の区画に、テナントの営む事業と競合する業種を新たに入居させないことを約束する条項です。学習塾の場合、「同一建物内に他の学習塾・予備校・個別指導塾を入居させない」といった内容で契約書や覚書に盛り込まれることがあります。単独の路面店舗であれば意識する場面は少ないですが、複数テナントが同居する商業ビルやショッピングセンター、駅前の複合施設に出店する場合は、集客への影響が大きいため確認しておきたい項目です。
なお、フランチャイズ塾の場合は本部が定める「テリトリー制」(一定エリア内で同一チェーンの他加盟店を出店させない仕組み)と混同されがちですが、これは本部と加盟店の間のFC契約上のルールであり、競業避止条項はあくまで貸主・借主間の賃貸借契約上の取り決めという点で性質が異なります。両方を確認しておくと安心です。
なぜ重要なのか、起こりうる事例
ある塾長は、駅前の複合ビルの3階に個別指導塾を開校しましたが、契約時に競業避止条項の話を持ち出さなかったところ、翌年に同じビルの5階へ別の学習塾チェーンが入居し、エレベーター内の案内板にも競合の看板が並ぶ状態になってしまったといいます。集客への直接的な影響を数値で示すのは難しいものの、「同じビルに塾が2つある」という状況は保護者からの見え方としても紛らわしく、ブランディング上も避けたい事態です。
一方、別の塾長は、契約交渉の段階で「同業種を新たに入居させない」旨の一文を覚書に追加してもらえないか貸主側に相談し、賃料や契約期間で一定の譲歩をする代わりに合意を得られたケースもあるといいます。競業避止条項は法律で当然に発生する権利ではなく、あくまで貸主との合意によって初めて成立するものである点を理解しておく必要があります。
交渉・確認のチェックリスト
- 契約書・重要事項説明書に競業避止条項(同業種排除の記載)があるかどうか
- 条項がある場合、「学習塾」「個別指導」「予備校」など対象業種の定義がどこまで広いか(英会話教室やプログラミング教室が対象に含まれるかなど)
- 条項の対象範囲が「同一建物内」なのか「同一敷地内・隣接区画まで」なのか
- 条項の有効期間(契約期間中のみか、更新後も継続するか)
- 条項がない場合、貸主・管理会社に追加で相談できる余地があるか(覚書や特約としての追加)
- すでに他のテナントが入居済みの場合、現時点で競合となる業種が入っていないか内見時に確認する
- ビル全体のテナントリーシングを管理会社が行っている場合、将来の空室にどんな業種を誘致する方針かをヒアリングできるか
交渉の進め方の目安
| 状況 | 交渉の考え方(あくまで目安) |
|---|---|
| 単独の路面店舗 | 他テナントとの競合リスクは小さく、条項の必要性は低い |
| 複数テナントの商業ビル・駅ビル | 契約前に条項の有無を確認し、なければ追加を打診する価値がある |
| 大規模な商業施設・ショッピングモール | 貸主側もテナント構成の多様性を重視するため、排他条項自体を断られることも多い |
| 賃料・契約期間で貸主に譲歩できる余地がある | 条項の追加と引き換えに、賃料や契約年数で交渉材料にできる場合がある |
東武東上線沿線の富士見市・ふじみ野市・志木市・朝霞市・和光市・川越市・坂戸市・東松山市などの駅前複合ビルでも、複数の教育系テナントが同居するケースは珍しくありません。単独区画の路面店舗と違い、こうした複合ビルへの出店を検討する際は、競業避止条項の有無を早い段階で確認しておくと安心です。
編集部からのアドバイス
競業避止条項は、貸主にとってはテナント誘致の自由度を狭める条件でもあるため、必ず認められるものではありません。ただし、複数テナントが同居するビルへの出店を検討している場合は、「条項があるか」を確認するだけでなく、「なければ交渉できないか」を一度は打診してみる価値があります。交渉が難しい場合でも、現時点でのテナント構成や、管理会社の今後のリーシング方針をヒアリングしておくことで、開校後に想定外の競合が現れるリスクをある程度予測できます。
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