個人塾の「看板講師」依存から脱却する方法|属人化リスクを防ぐ仕組みづくり
なぜ「看板講師依存」がリスクになるのか
個人塾・小規模塾の多くは、開業当初「塾長自身」や特定のベテラン講師の指導力を最大の武器として生徒を集めている。授業がわかりやすい、生徒からの信頼が厚いといった強みは大切な資産だが、同時に「その講師がいなくなったら塾が成り立たない」という状態は経営上のリスクでもある。退職・独立・体調不良・家庭の事情などで特定の講師が急に離脱した場合、生徒が講師を追って転塾したり、授業の質が一気に落ちて退塾が連鎖したりするおそれがある。埼玉県内の東武東上線沿線エリアのように個人塾同士の競合が多い地域では、講師の独立開業や近隣塾への移籍によって生徒が流出するケースも珍しくなく、属人化リスクへの備えは早い段階から意識しておきたい。
属人化が進みやすい塾の特徴
- 指導内容やテキストの進め方が講師の頭の中にしかなく、マニュアル・進度表が存在しない
- 特定の講師しか担当していない学年・科目があり、代講できる人がいない
- 保護者との連絡や面談を、塾ではなく講師個人の裁量・LINEアカウントで行っている
- 生徒・保護者が「塾に通っている」というより「その先生に習っている」感覚を持っている
- 採用・研修の仕組みがなく、新しい講師を育てる余力が塾長にない
これらに複数当てはまる場合、その講師が抜けた瞬間に生徒の受け皿がなくなり、教室運営そのものが止まってしまう可能性がある。
依存を減らすために取り組みたい仕組みづくり
属人化を完全にゼロにすることは現実的ではないが、「その講師がいないと即座に立ち行かなくなる」状態を避けることは可能だ。以下は取り組みの目安となる項目である。
| 取り組み | 具体的な内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 指導内容の標準化 | 科目・学年ごとの進度表、使用テキストの範囲表を文書化する | 担当が変わっても授業の質を維持しやすい |
| 複数担当制の導入 | 1科目を1人だけに任せず、サブ担当・引き継ぎ役を決めておく | 急な欠勤・退職時に代講できる |
| 連絡窓口の塾一本化 | 保護者連絡は塾の公式LINEや事務局経由にする | 講師個人への依存を減らし、情報が塾に残る |
| 採用・育成の仕組み化 | 新人研修マニュアル、模擬授業でのチェック体制を整える | 属人的な指導ノウハウを次の講師に継承できる |
| 雇用契約・就業規則の整備 | 退職時の引き継ぎ期間や競業避止に関する条項を確認する | 急な離職・独立トラブルへの備えになる |
なお、退職・独立に伴う競業避止義務の設定は、範囲や期間によっては法的に無効と判断されることもあるため、就業規則や雇用契約書に盛り込む際は社会保険労務士や弁護士に確認しておくと安心だ。
数値の目安
- 1人の講師が単独で担当する生徒割合は、教室全体の3〜4割程度を超えると依存度が高い状態と見られやすい(あくまで目安)
- 退職の申し出から引き継ぎ完了までの期間は、最低でも1〜2ヶ月を確保できるよう就業規則に定めておくと、代講・引き継ぎの準備がしやすい
- 指導マニュアル・進度表の整備には、科目数にもよるが数週間〜数ヶ月単位の初期投資(時間)がかかることを見込んでおきたい
失敗事例・成功事例(匿名)
苦戦したケース:塾長がほぼ全学年・全科目を1人で担当していた個人塾で、体調を崩して数週間授業を休まざるを得なくなった際、代講できる講師がおらず、複数の生徒が別の塾へ移ってしまったという。指導ノウハウが塾長の頭の中にしかなく、急な引き継ぎができなかったことが大きな要因だった。
スムーズに進んだケース:開業3年目から進度表とテキストの範囲表を整備し、主要科目に必ずサブ担当を置くようにしていた個別指導塾では、ベテラン講師が独立のため退職した際も、事前に決めていた引き継ぎ期間の中で後任講師への移行を進められ、退塾者をほとんど出さずに済んだという。
編集部からのアドバイス
看板講師の存在は塾の強みであると同時に、経営上の弱点にもなり得る。指導力そのものを否定する必要はないが、「その人がいなくても塾として一定の品質を保てる仕組み」を並行して整えておくことが、長期的な経営の安定につながる。特に開業から数年が経ち、生徒数が増えてきたタイミングは、進度表の整備や複数担当制の導入を検討する良い機会といえるだろう。
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