個人塾の就業規則整備ガイド|講師10名を超えたら義務化?作成・届出の実務ポイント

生徒数が伸びて講師が増えたときに見落としがちな「就業規則」

個人塾を開業した当初は、塾長ひとり、あるいは学生アルバイト講師数名という体制がほとんどだ。しかし生徒数が増え、講師を次々に採用していく中で、労働基準法上のある義務ラインをうっかり超えてしまうケースがある。それが「常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し労働基準監督署に届け出なければならない」という労働基準法第89条の規定だ。塾長自身が気づかないまま義務違反の状態になっていることも珍しくない。本記事では、就業規則の作成・届出義務が発生するタイミングと、盛り込むべき内容、あわせて整えておきたい労使協定について整理する。

就業規則の作成・届出が義務になるタイミング

労働基準法第89条は「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に就業規則の作成と所轄労働基準監督署への届出を義務づけている。ここでポイントとなるのが、次の2点だ。

  • カウントする「労働者」には、正社員だけでなく学生アルバイト講師やパート講師も含まれる。雇用形態を問わず、継続的に雇用している人数で判定する
  • 判定は法人・個人単位ではなく「事業場」単位で行われるのが原則。複数教室を運営している場合は、教室(事業場)ごとに10人以上いるかどうかで判断されることが多い
  • 「常時」使用とは、繁忙期だけ一時的に増える人数ではなく、日常的・継続的に雇用している人数を指す

個人塾では、塾長・専任講師に加えて、学生アルバイト講師を多数抱えるコマ数制の運営スタイルが多く、生徒数の増加に伴って講師数が10人を超えることは決して珍しくない。10人未満であっても就業規則を作成すること自体は自由であり、労務トラブルの予防という観点からは、義務ラインに関わらず早めに整備しておくことが望ましい。判定の詳細や事業場の考え方は、最終的に所轄の労働基準監督署または社会保険労務士に確認してほしい。

就業規則に盛り込むべき項目

就業規則には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」と、制度を設ける場合に記載が必要な「相対的記載事項」がある。塾運営に即して整理すると、以下のようになる(あくまで一般的な項目の目安であり、実際の作成にあたっては社会保険労務士への相談を推奨する)。

区分主な記載項目塾運営での具体例
絶対的記載事項始業・終業時刻、休憩、休日、休暇授業コマの時間帯、シフト制の勤務時間の定め方
絶対的記載事項賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払日時給制講師の時給、コマ給、事務作業の賃金の扱い
絶対的記載事項退職に関する事項(解雇の事由を含む)アルバイト講師の退職手続き、更新しない場合の基準
相対的記載事項賞与・退職金、安全衛生、災害補償講師への報奨金制度、通勤中の事故対応
相対的記載事項服務規律、懲戒の事由・種類生徒・保護者情報の守秘義務、遅刻・無断欠勤時の対応

特に個人塾の場合、生徒・保護者の個人情報や成績情報を扱う立場であることから、講師の守秘義務や情報の取り扱いに関する服務規律を明記しておくと、トラブル予防に役立つ。また、アルバイト講師の急な退職・欠勤が授業運営に直結しやすい業種でもあるため、退職の申し出期限や、シフト変更のルールを具体的に定めておくことも実務上重要になる。

あわせて整備しておきたい労使協定・書類

就業規則とあわせて、講師数が増える段階で確認しておきたい労務関連の手続きは以下のとおりだ。

  • 36(サブロク)協定:法定労働時間を超えて講師に時間外労働・休日労働をさせる場合、労働者数に関わらず労使協定を締結し労働基準監督署へ届け出る必要がある。夏期講習・冬期講習など繁忙期に勤務時間が伸びやすい塾業態では特に確認が必要な項目だ
  • 雇用契約書・労働条件通知書:就業規則とは別に、個々の講師と交わす雇用契約書・労働条件通知書の内容が就業規則と矛盾していないか、増員のタイミングで見直す
  • 社会保険・労働保険の加入状況:講師の勤務時間・日数が一定基準を超えると社会保険の加入対象になる場合がある。加入基準は法改正で変わることがあるため、最新の基準は年金事務所・社会保険労務士に確認する

よくある失敗パターンと対応できていたパターン(匿名事例)

失敗パターン:生徒数の増加に合わせて学生アルバイト講師を次々に採用し、気づけば1教室で10名を超える講師を抱えていた個人塾がある。就業規則を整備していなかったため、講師間で「遅刻したときの扱い」や「シフトを休む際の連絡ルール」が曖昧なまま運用されており、講師とのトラブルが発生した際に明確な根拠を示せず対応に苦慮したという。

対応できていたパターン:2教室目の開校を機に講師数が増える見込みが立った段階で、社会保険労務士に相談して早めに就業規則の骨子を作成していた個人塾もある。開業当初から服務規律や守秘義務を明文化していたことで、講師の入れ替わりが多い時期でも情報管理のルールが揺らがず、保護者からの信頼維持にもつながったという。

編集部からのアドバイス

就業規則の整備は、義務ラインに達してから慌てて着手するよりも、講師数が増え始める段階で早めに骨子を用意しておくほうが負担が少ない。富士見市・ふじみ野市・志木市・新座市・朝霞市・和光市など東武東上線沿線エリアで2教室目・3教室目への展開を検討している塾長であれば、教室(事業場)ごとの講師数を把握し、義務化のタイミングを見誤らないようにしたい。労働基準法の適用や届出の要否は事業場の実態によって判断が分かれるため、実際の整備にあたっては必ず所轄の労働基準監督署または社会保険労務士に相談のうえ進めてほしい。

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