塾テナント契約の「IT重説」とは|オンライン重要事項説明で遠隔地からの出店検討はどこまで進められるか

フランチャイズ本部の出店担当者が、東京の本社にいながら埼玉県内の候補地を何件も比較検討する。個人で複数エリアの物件を見比べたい塾長が、そのたびに現地まで足を運ぶのは難しい。こうした場面で活用が広がっているのが「IT重説(アイティージュウセツ)」、すなわちテレビ会議システム等を使って行うオンラインの重要事項説明だ。宅地建物取引業法35条に基づく重要事項説明は、これまで宅地建物取引士が対面で行うのが原則だったが、一定の要件を満たせば、賃貸取引においてオンラインでの実施が認められている。物件の内見や契約手続きを効率化できる一方、画面越しでは伝わりにくい情報もあり、塾テナントの契約では注意すべき点がある。

IT重説とはどのような仕組みか

IT重説は、宅地建物取引士が対面ではなくテレビ会議システムなどの映像・音声を用いて重要事項説明を行う制度で、賃貸取引についてはすでに本格運用されている。実施にあたっては、事前に重要事項説明書および添付書類(図面や設備表など)を借主側に送付しておき、借主がその書類を手元で確認しながら、宅建士の説明を画面越しに受けるという流れになる。宅建士は説明の冒頭で宅建士証を画面に提示し、借主本人であることを確認したうえで説明を進める。フランチャイズ塾のように出店候補地を複数の都道府県にまたがって検討している場合や、遠方に住みながら東武東上線沿線(ふじみ野市・志木市・朝霞市・和光市など)での開校を計画している個人塾長にとっては、候補物件ごとに現地へ出向く手間を減らせる点が実務上のメリットになる。

IT重説を実施するための主な要件

  • 宅建業者・借主の双方が、映像と音声を双方向でやり取りできるIT環境を利用していること
  • 重要事項説明書および添付書類を、説明の実施前に借主へ送付済みであること(郵送または電子データでの事前送付)
  • 借主が送付された書類を確認しながら説明を聞ける状態にあること(印刷またはPDF等での閲覧環境)
  • 宅建士が、映像を通じて借主本人であることを確認できること
  • 宅建士証を画面上に提示し、借主が視認・確認できること
  • 説明の途中で映像や音声が途切れないなど、双方が十分にやり取りできる通信環境が確保されていること

失敗しやすいポイント

ある個人塾長は、都内在住のまま埼玉県内での開校を計画し、複数の候補物件についてIT重説を活用して効率よく比較検討を進めていた。ところが、事前に送付された重要事項説明書をPDFのまま画面上でざっと目を通すだけで済ませてしまい、特約事項の欄に記載されていた「看板設置に関する管理組合の事前承認が必要」という一文を見落としていたという。契約後に看板業者へ発注する段階になって初めてこの制約に気づき、開業直前になって管理組合との調整に追われることになった。オンラインでの説明は効率的だが、対面であれば紙面を指でなぞりながら確認できたはずの細部を、画面越しでは読み飛ばしてしまいやすい。IT重説を利用する場合ほど、送付された書類は事前に印刷し、特約事項・図面添付資料まで目を通しておく姿勢が欠かせない。

IT重説を利用する際のチェックリスト

  • 重要事項説明書・添付図面は事前に印刷し、特約事項の欄まで通読してから説明に臨んでいるか
  • 説明中に不明点があれば、その場で宅建士に質問し、回答を記録に残しているか
  • 現地の共用部・避難経路・エレベーター動線など、画面では確認しにくい箇所を別途内見で確認する予定を組んでいるか
  • 周辺の商業施設・通学路・競合塾の有無など、地図やストリートビューだけでなく現地で確認する機会を設けているか
  • 騒音・振動・臭気・日照など、オンラインでは伝わりにくい環境要因を近隣の口コミや現地訪問で補っているか
  • 契約締結自体は電子契約で行うのか、書面での押印が必要なのか、事前に貸主・仲介業者とすり合わせているか

対面重説とIT重説の違い(目安)

比較項目対面での重要事項説明IT重説(オンライン)
移動・日程調整宅建士・借主とも現地または事務所への移動が必要移動不要で日程調整がしやすく、遠隔地からの出店検討に向く
書類の確認しやすさその場で紙面を指し示しながら説明を受けられる事前送付された書類を自分で読み込む主体性が求められる
現地環境の把握説明と同時に建物・周辺環境も目視できることが多い建物・周辺環境は別途、現地内見で補う必要がある
向いている場面近隣での物件契約、初めての商業用テナント契約複数エリアの候補地比較、フランチャイズ本部による広域出店検討
※実施可否・運用の細部は宅建業者ごとに異なる。最終的な適否は取引を担当する宅建業者・宅建士に確認すること

編集部からのアドバイス

IT重説は、遠隔地からの出店検討や複数物件の比較を効率化できる便利な仕組みだが、あくまで「説明を受ける手段」が変わるだけで、契約内容そのものを吟味する責任が軽くなるわけではない。むしろ画面越しだからこそ、送付された重要事項説明書・添付図面は事前に紙に出して読み込み、特約事項や管理規約上の制約を自分の目で確認する姿勢が重要になる。また、教室の防音性・周辺の人通り・競合塾の状況など、画面では伝わらない情報は、契約前に最低一度は現地に足を運んで確認することを強くすすめたい。IT重説の実施可否や具体的な運用方法は宅建業者によって対応が異なるため、利用を検討する際は早い段階で仲介の宅建士に相談してほしい。

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