居抜き物件の「造作譲渡契約」とは|設備買取トラブルを防ぐ契約書チェックポイント
居抜き物件で塾を開業する場合、貸主との「賃貸借契約」とは別に、前テナントとの間で「造作譲渡契約」を結ぶ必要があるケースが多い。造作譲渡とは、内装・什器・空調設備など前テナントが設置した設備一式を、新しい借主が有償または無償で引き継ぐ契約のことだ。賃貸借契約書ばかりに気を取られ、造作譲渡契約の内容を十分確認しないまま開業準備を進めると、設備の不具合や権利関係のトラブルに発展することがある。本記事では、造作譲渡契約の基本と、契約前に確認しておきたいチェックポイントを整理する。
造作譲渡契約とは何か
造作譲渡契約は、前テナントが設置した内装・什器・厨房設備・空調機器などの「造作」を、退去する前テナントから新しい借主が譲り受ける際に結ぶ契約だ。法律上は貸主・借主間の賃貸借契約とは別個の契約であり、当事者は「前テナント(譲渡人)」と「新テナント(譲受人)」になる。貸主は当事者にならないことが多いが、造作の譲渡について貸主の承諾が必要な場合もあるため、事前に賃貸借契約書や貸主への確認が欠かせない。塾向け物件では、パーテーションで仕切られた個別ブース、防音工事済みの壁、空調設備などがそのまま使える状態になっていることが居抜き物件の魅力だが、この「そのまま使える」という前提を契約書でどこまで担保してもらえるかが、後々のトラブルの分かれ目になる。
失敗事例|口頭確認だけで契約し空調故障の責任で揉めたケース
ある塾長は、以前学習塾が入っていた居抜き物件を紹介され、「内装・空調・パーテーションはそのまま使えます」という不動産業者の口頭説明を信じて契約を進めた。造作譲渡契約書には譲渡対象設備の詳細なリストが添付されておらず、「造作一式」とだけ記載されていたため、開業直前に空調が故障した際、前テナント(譲渡人)に修理費用を請求できるのか、現状有姿での引き渡しだったのか判断がつかず、結局自己負担で修理することになった。契約時に「譲渡対象設備を1点ずつリスト化する」「動作確認済みか現状有姿かを明記する」という基本を怠ったために生じたトラブルであり、造作譲渡契約は賃貸借契約と同じくらい丁寧に確認すべき書類だと振り返っている。
契約前のチェックポイント
- 譲渡対象設備を個別にリスト化しているか:「造作一式」ではなく、什器・空調・照明・パーテーションなど品目ごとに明記されているか確認する
- 現状有姿か動作保証付きかを明記しているか:故障時の責任の所在を契約書上で明確にする
- 造作の所有権が本当に前テナントにあるか:前テナントがリース契約中の設備を無断で譲渡しようとしていないか確認する
- 貸主の承諾を得ているか:造作譲渡について貸主の書面承諾が必要な物件かどうかを賃貸借契約書で確認する
- 前テナントの未払い債務が引き継がれないことを確認したか:造作譲渡と賃借人の地位承継は別問題であることを理解する
- 譲渡金額の内訳・支払い時期が明確か:着金と設備引き渡しのタイミングにずれがないか確認する
造作譲渡とスケルトン取得の比較
| 項目 | 造作譲渡(居抜き) | スケルトン取得 |
|---|---|---|
| 初期の内装工事費用 | 抑えられる場合が多い | 全面工事が必要で高額になりやすい |
| 造作譲渡金の発生 | 発生することが多い(目安は数十万〜数百万円程度) | 基本的に発生しない |
| 設備の状態確認の重要度 | 非常に高い(契約書での明記が必須) | 新設のため比較的リスクは低い |
| レイアウトの自由度 | 前テナントの間取りに制約される | ゼロから塾仕様に設計できる |
造作譲渡金の相場感
造作譲渡金は、前テナントが投じた内装・設備費用の残存価値や、そのまま使える設備の充実度によって大きく変動する。小規模な個別指導塾の居抜きであれば数十万円程度、防音工事や空調設備が充実した集団指導塾の居抜きであれば百万円を超えるケースもある。いずれも「目安」であり、譲渡対象設備のリストと照らし合わせて、金額が妥当かどうかを複数の内装業者や不動産業者に確認してもらうことをおすすめしたい。相場より高額に感じる場合は、譲渡対象設備の内訳を再確認し、実際に活用できる設備がどの程度あるかを冷静に見極める必要がある。
編集部からのアドバイス
造作譲渡契約は、賃貸借契約に比べて簡易な書面で済まされがちだが、開業後の設備トラブルを防ぐためには賃貸借契約と同等に丁寧な確認が必要だ。特に東武東上線沿線の朝霞市・志木市・新座市・和光市などで空き店舗の居抜き物件を検討する場合、以前の業態が塾以外(飲食店・美容室など)だったケースもあるため、パーテーションや空調が塾用途にそのまま流用できるかを内見時に必ず確認したい。
なお、造作譲渡契約や賃貸借契約の法的な有効性・条項の解釈については、契約書のひな形を鵜呑みにせず、宅地建物取引士や弁護士など専門家への確認を前提としてほしい。本記事の内容は2026年時点の一般的な実務理解に基づくものであり、個別の契約内容を保証するものではない。
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